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初期中絶の体験を記録していく

やむをえない事情で初期中絶をしなくてはならなくなった。その体験を記録していく。

中絶を決めるまでの経緯

妊娠発覚から中絶の決断。

生理が3日ほど遅れていた。基礎体温も高いまま。いつも生理は予定通りに来るのでちょっと心配になり、生理予定日の4日目で市販の妊娠検査薬を使用したら陽性が出た。本当にびっくりした。ただ、「これは困ったことになった」という感情以上に、「うれしい」という感情の方が大きいことに自分でも驚いた。自覚していた以上に、愛する人との子どもができることは嬉しいものなのだなと思った。

しかし、冷静に考えてみると、どうしても今の状況では出産して育てていくことができない。産みたい気持ちと、中絶しなくてはいけない気持ちの間で揺れた。

帰宅して夫に「妊娠したかもしれない」というと、夫もびっくりしていたが喜んでいるようにも見えた。真剣ではないけど名前を考えたりしていて、そんな姿をみていると、自分の産みたい気持ちも大きくなった。「でも、仕事の責任があるから今はどうしても無理だと思う」と話すと、夫は最初「どうにかなるんじゃないか」と言っていたけど、「命を懸けて産むのは君だから、君が決めていい。僕は現時点ではまだ『命』にはなっていないと思うから、中絶を選択しても軽蔑しない」と言ってくれた。優しい人でありがたかった。

翌日、産婦人科へ行った。「おめでとう」と言われたら気持ちが揺れそうだったので、最初の問診票で中絶を検討していることを書いた。診察室に入ると「あ、中絶希望だね」と言われ、もちろん理由などは聞かれず、当日の手術の流れや費用等について淡々と説明された。内診では、「4週目だからまだ小さくてわからないけど、たぶんここにあるね。来週、もう一度来て、手術できるかどうか再度確認しましょう」とのこと。小さい円のようなものが見えて、「子どもがいるんだ、すごい、嬉しい」という気分と、「中絶しなくては。冷静でいなくては」という気分が混じっていた。

帰る前、医者にどうしても聞きたいことがあった。「中絶をしたあとは・・・妊娠しにくくなるんですか?」と質問した。涙声になってしまった。医者は私がまだ100%決意していなかったことに驚いたのか少し間をおいて、こちらを見ずに「それはなんともいえない。妊娠するかもしれないし、しないかもしれない。ただ、中絶をするということは、そういう(妊娠しづらくなる)リスクもあるんだということを十分に知っておいてほしい。よく考えて話し合って、来週もう一度来てください」と言った。

その翌週に婦人科へ行くと、はっきりと存在を確認することができた。そのときも「嬉しい」という気持ちを自覚したけれど、「中絶しなくては。それが一番正しい」と考えるようにした。医者から「考えてきた?」と聞かれたので、「夫ともう一度相談しますが、すごく残念ですがどうしても中絶しなければならないと思います」というようなことを答えた。「それなら早い方がいい。手術の予約をとって血液検査もしてください」と言われ、採決のため別室へ移動した。看護師さんが血液を採取したあと、手術前日から当日にかけての説明をし始めた。途中で、「あの・・・もしも、夫と話し合って、やっぱり中絶しないという方向になったら、キャンセルってできるものなんでしょうか?」と聞いた。看護師さんがちょっとびっくりした様子で「あ、まだ中絶するかどうかは100%決まっていないんですね?」と言って、いろいろと思いやりのあることを言ってくれた。もしキャンセルということなら、前日までに連絡をくださいとのことだった。(この病院は出産希望の人が圧倒的に多いだろうに、今回の中絶に関してひどいことを言われたり冷たくされたりしたことは一度もなかった。自責感が強かったので本当にありがたかった)

帰宅後、夫に妊娠していたよと伝えた。夫は、「長く子どもができなかったから、今回のことはやはり特別なことのように思う。それを僕たちの判断で人工的に止めてしまっていいんだろうか?」と言った。私もまったく同じ気持ちだった。「私も同じ気持ちがある。だけど、仕事のことを考えると、どうしても今年は無理だと思う。産んだ後も子育ては続く。私たちにその準備ができているとは言えないと思う」と話した。感情としては産みたいのだから、これを話している間も辛くて仕方がなかった。私と夫の間で、「子どもができるかどうかは神様が決めること」という考えがあった。特定の宗教を信じているわけではないけど、積極的に不妊治療をしなかったのもこの考えのためだった。それでも、夫は2日間ほど考えて、「でも、神様が決めたと今は思っているけど、実際には生物学上の偶然で、そんなに特別なことと考えなくても良いのかもしれないね」と、最終的に中絶することを受け入れてくれた。

2回目の病院あたりから、つわりらしき症状が始まった。おなかはすくのだがまったく食べる気が起きない。空腹になると猛烈な吐き気が起きるので、常に何かを食べていた。食べると吐き気は落ち着くので、実際に吐くことはなかった。

それから、異様な眠気と疲れやすさ。午前の仕事を済ませると疲労困憊してしまい、椅子に座っていることすら辛いことがあった(実際、職場で横になっている時間もあった)。この時期は仕事も非常に立て込んでいるときで種々の締め切りに追われ、疲れやすさと眠気には本当に困ってしまった。「このままだと仕事に支障が出てしまう」と焦る気持ちが強かったが、その一方で、「おなかに子どもがいる」と思うと愛おしいような幸せな気分にもなり、妊娠するとこういう気分になるものなのかと仕事第一だった自分としては感慨深かった。

(ただ、この眠気は、妊娠と中絶に向けたストレスと仕事のストレスが重なったことで鬱症状が起きていた可能性もある。これまでにも、仕事や家庭でのストレスがあまりに強いと、眠気に悩まされることが何回かあった。)